第83章 凰姫、行かないで

彼女は、どうしても納得できなかった。

白川凰姫――顔だけが取り柄の、ただの飾り人形みたいな女が、芳丸夫人の座にのうのうと居座っている。

それなのに自分は名の知れた俳優だというのに、こんな場所で他人の顔色をうかがわなければならないなんて。

今夜だって、バーテンダーに大金を握らせてようやく聞き出したのだ。芳丸巡哉がここに来る、と。

江口梓月は、カウンターの端でひとり黙って酒をあおっている男を見つめた。

男は酔っているときが一番脆い。

そこが、突ける。

梓月の瞳に、きらりと鋭い光が走る。絶好の機会だった。

深いVネックのシルクのワンピースを指先で整え、曲線が一番きれいに出る角度を作...

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