第89章 一擲千金

芳丸巡哉は露骨に顔をしかめた。

「汚ねぇ。外に捨てろ」

「まだこんなに小さいの。捨てたら死んじゃうよ」

白川凰姫は子猫をぎゅっと抱きしめ、見上げた。瞳の奥に、かすかな懇願が滲む。

数秒、視線が絡む。

芳丸巡哉は結局、負けた。

何も言わずに踵を返し、浴室へ消える。戻ってきた手には、ぬるま湯の入った器と、清潔なタオル。

無言で子猫を受け取ると、タオルで身体を丁寧に拭きはじめた。優しいとは言いがたい。どこか不器用で、手つきもぎこちない。けれど、妙に真剣だった。

子猫も温もりを感じたのか、ぶるぶる震えるのをやめ、されるがままに身を預ける。

白川凰姫はその横顔を見つめながら、胸のどこ...

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