第90章 そっとして、痛いよ

オークションが終わると、招待客たちは三々五々に散っていった。名残惜しそうに小声で言葉を交わす者もいれば、そのまま会場を後にする者もいる。

芳丸巡哉が白川凰姫をかばうように立ち上がらせ、退出しようとした、その背に――穏やかな声がかかった。

「凰姫?」

振り返ると、加賀景淳が立っていた。

ラフな装いはすでに脱ぎ、濃いグレーのスーツをきちんと着こなしている。柔らかな物腰も相まって、いかにも温厚で上品な男に見えた。

「先輩? どうしてここに……?」

凰姫は思わず目を瞬かせる。

「うちの会社が、今回のチャリティー晩餐会のスポンサーのひとつなんだ」

加賀景淳は微笑み、ふと視線を落とした。...

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