第91章 じゅんの選択を尊重する

坂東補佐は低く笑い、「奥様は……まだ芳丸社長のことを、わかっていらっしゃらない。もう少し知ろうとなさったら、きっと……」と言いかけた。

そこでいったん言葉を切り、ただ微笑むだけで、それ以上は続けない。

――きっと気づく。

芳丸巡哉は、白川凰姫が思っている以上に、ずっと彼女を大切にしているのだと。

ただ、不器用なだけだ。

同じころ。

数十キロ離れた別のリゾートホテルでは――。

新谷知代が苛立ちまぎれにスマホをソファへ放った。投げ捨てた勢いとは裏腹に、作り込んだメイクだけは崩れていない。けれど、その奥の不機嫌は隠しようがなかった。

「もう二日よ。じゅん、帰ってこない。連絡もひとつ...

ログインして続きを読む