第107章 私があなたの死体を探しに来るのを待っていますか?

月は皓々と、星は稀であった。

静謐な夜の中、耳に届くのは風の音、水のせせらぎ、そして二人の呼吸音だけだ。

小野寺彩音は長いこと古賀硯司を見つめ、呼吸が数度、乱れた。

男は辛抱強く彼女を見つめている。急かすことも、疑うこともない。

小野寺彩音の睫毛が、心の乱れから微かに震える。

「古賀硯司、あなた……」

心緒が千々に乱れていた。何を言いたいのか、何を訊きたいのかは分かっている。

だが、全ての言葉が唇の端に堆積し、一度に押し寄せたせいで、かえってこんがらがった糸のように収拾がつかない。

「ゴホッ! ゲホゲホッ!」

その時、古賀硯司が突然咳き込み始めた。

小野寺彩音は彼を支えよう...

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