第320章 嫉妬する

バーの一階は喧騒に満ちていたが、ボーイについて二階に上がると、そこは別世界だった。

高橋樹はその個室の一つに座っていた。神崎暁が意外に思ったのは、個室には彼一人しかおらず、テーブルの上には大量の酒瓶が転がっているだけだったことだ。

古賀硯司は彼女が来る前に帰ってしまったのか。高橋樹を一人ここに残して、万が一何かあったらどうするつもりだろう。もし彼女が来なかったら?

友達付き合いってこんなものだったかしら……神崎暁は、自分が無意識のうちに高橋樹を庇っていることに気づいていなかった。

神崎暁は個室の入口に立ったまま声をかけず、ただ男が次から次へと酒を呷るのを眺めていた。

「酒を——」もと...

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