第34章 自分の夫のお金を使う

月は明るく、星はまばらだ。

本邸はすっかりお祝いムードに包まれ、使用人たちは慌ただしく、しかし整然と行き来し、古賀大奥様の誕生祝いの宴の最終準備を進めている。

小野寺彩音は古賀大奥様を部屋まで送って休ませ、廊下に出たところでふと足を止めた。

待って、じゃあ今夜、私はどこに泊まるの?

「三若奥様、寝間着は二日前に洗濯し、硯司様とのお部屋の浴室に置いてございます」使用人はまるで小野寺彩音の心を見透かしたかのように、微笑みながら言った。

硯司様とのお部屋の浴室……。

なんて艶めかしい言い方をするのかしら。

「余っている部屋はある? 最近眠りが浅くて、一人で寝たいの」小野寺彩音は使用人に...

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