第352章 高橋樹、君は貢ぐ君か

喧騒に包まれたバーの外。行き交う人々の中に、神崎暁の知る顔は一つとしてなかった。

まるでこの世界に彼女を繋ぎ止めるものは何もなく、亡き両親によってただ一人、現世に取り残された孤魂であるかのように。

闇の中に佇む彼女の身に夜風が吹きつけ、肌を冷たく刺した。

神崎暁は気づいていなかった。すぐ近くに、長身の男が立っていることに。男は身を隠そうともせず、彼女の背後数メートルという距離にただ立っていた。振り返りさえすれば、その姿が目に入ったはずだ。

だが、神崎暁は躊躇うことなくタクシーに乗り込んだ。

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桜庭凱のツケを払う者は誰もおらず、自身の売り上げに響くどころかオーナーに怒鳴ら...

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