第378章 彼を愛さず、他の人も愛せない

神崎暁は小首をかしげ、微かに戸惑いの色を浮かべた。

「てっきり……」彼女は正直な胸の内を明かす。「あなたが、私に愛されることを望んでいるとばかり思っていたわ。愛しているからこそ、一緒にいるのだと」

高橋樹は自嘲の笑みを漏らした。

かつては確かに、そう願っていた。

だが現実は、彼の矜持を幾度となくへし折り、妥協を強いてきた。『愛ゆえに共にいる』ことよりも、『愛していないから去っていく』という結末の方が、彼には到底受け入れ難かったのだ。

「神崎暁。恩義なんていうクソみたいな理由で、俺に妥協してほしくはない」

高橋樹は彼女をじっと見据える。

「だが——他の理由で俺を選ぶというなら、それ...

ログインして続きを読む