第43章 夫婦共同財産、義姉さんを返して!

周藤啓は階下で待っていた。

しかし、彼が待っていたのは、階下に降りてきた古賀硯司ただ一人だった。

見上げると、小野寺彩音の家の窓にはすでに明かりが灯っている。

古賀硯司は煙草に火をつけ、吸い始めた。

彼に特に喫煙の習慣はなく、気分が悪い時にだけ吸う。

周藤啓は言葉を選び、正直に告げることにした。「古賀社長、奥様が先ほど病院の火傷科に立ち寄られたことを確認しました。医師に尋ねたところ、奥様の手の傷が水に濡れてしまったとのことです」

古賀硯司の指先で、煙草がぽきりと折れた。

マンションの中は静寂に包まれていた。

小野寺彩音は明かりをつけ、その背中からは悲しみが漂っている。

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