第55章 古賀硯司の顔、冷たくなる

「あなた……好きな人でもいるんですか?」

「ええ、でも彼女はまだ知らないんです。片想いですよ」江沢淮序は不意に話題を変えた。「特許権の契約を結ぶ予定があるんです。後輩は法学を専攻しているでしょう、明日時間があれば一緒に契約書を見てもらえませんか? カモにされるんじゃないかと心配で。お礼に、食事でもご馳走しますよ」

小野寺彩音は彼の左胸のあたりを一瞥し、無意識のうちに頷いていた。「はい」

彼が彼女を見る眼差しは、ことさらに深かった。

まるで猛獣がようやく獲物を捕らえたかのようだ。

小野寺彩音はそのような視線に耐えきれず、目を逸らす。頬が少し熱くなるのを感じた。

スカートの裾に添えられ...

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