第56章 私は結婚しました、彼は私の夫です

CBDのオフィスビル街の外は、行き交う車と足早なオフィスワーカーでごった返している。

「先輩、さっきの人が誰なのか、気にならないんですか?」江沢淮序がずっとそのことに触れないので、小野寺彩音は振り返って尋ねた。

「君が話したくないなら、俺は聞かない」江沢淮序は、実のところ知っていた。

先日、小野寺彩音がその男を連れて屋台街で食事をしていたところを、誰かがこっそりと二人が一緒にいる写真を撮って彼に送ってきたのだ。

男の後ろ姿しか写っていなかったが、見間違えるはずがない。

その男の外見はあまりにも優れており、小野寺彩音の隣に立てば、確かに『お似合い』という言葉がしっくりくる。

彼の意表...

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