第77章 妻のことは、あなたに教えない

小野寺彩音は弁論部の他のメンバーの電話番号を覚えていなかったため、ホテルのフロントに頼んで彼らに電話をかけてもらい、自分がロビーに着いたことを伝えてもらった。

「小野寺彩音、どういうことよ。LINEでずっと呼んでたのに返事がないじゃない」相馬語蝶は出てくるなり文句を言った。

彼らは出かける前にグループチャットで小野寺彩音に連絡を入れていたのだが、彼女からの返信は一切なかったのだ。

小野寺彩音はスマホを落としたと言おうとしたが、ふと見ると、古賀硯司のスマホが自分の手に握られているではないか。

そんな嘘をつく機会はまるでない。

「私のLINE、なんだか調子が悪いみたいで、メッセージがうま...

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