第78章 証書を持って職に就く、正当な夫婦

——違う。

やっぱり違う!

スマホにパスワードエラーが五回表示された後、ついに画面がロックされてしまった!

小野寺彩音は腹が立った。

自分の誕生日が古賀硯司のスマホのパスワードであるはずがないと分かってはいたけれど、実際に試してみて、やはり失望と苛立ちを禁じ得なかった。

その上、今は会社のビルの下で足止めを食らっている。小野寺彩音はその場で何もない空間を思い切り殴りつけた。

「馬鹿! 古賀硯司の大馬鹿!」

「俺のことか?」

言葉が終わらないうちに、ロビーの中から男性の声がした。

古賀硯司はスーツに身を包み、顔立ちは端正で、気品ある雰囲気を纏っていた。フォーマルなスーツのベスト...

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