第82章 硯司さん、怖いです

「あ? ああ、わかった!」

小野寺俊明ははっと我に返り、洗面所へ向かって手を洗い清めた。

これまで神経が張り詰めていたが、今、熱い湯が指を洗い流し、血の匂いが鼻腔を突くと、小野寺俊明は生理的な吐き気を覚えた。しかし、これが小野寺彩音の血だと思うと、口を開くことができなかった。

「お前……」小野寺俊明が洗面所から出て、口を開こうとした瞬間、江沢冬弥に一瞥されて制止された。

江沢冬弥は注意を促す。「静かにしろ」

小野寺俊明は江沢冬弥を値踏みするように眺め、賞賛の言葉を口にした。「小野寺彩音も見る目があるな」

ヒモ男を囲っているだけでなく、見た目が良くて世話焼きで、しかもなかなかのオーラ...

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