第84章 小野寺彩音は彼を恨んで、仕方なく妥協する

病室のドアが再び開かれた。

古賀硯司が真っ先に視線を向けると、小野寺俊明が「助けてくれ、死にそうだ」とでも言いたげな表情で出てくるのが見えた。

「あ、えっと、小野寺彩音はまだ寝てる」小野寺俊明は髪を掻きながら、小野寺彩音が会いたくないと言っているとは口にできなかった。

しかも、小野寺彩音の言葉のせいで、彼はもう「お義兄さん」と呼びたくもなくなっていた。

実のところ、少々気まずい。古賀硯司が小野寺静と付き合っていようが、小野寺彩音と一緒になろうが、彼はこの男を「お義兄さん」と呼んでいたのだ。

まったく、女を替えても、呼び方は替えないとは!

古賀硯司は眉間に皺を寄せ、問いかけた。「小野...

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