第12章

車内にいたのは北村陸だった。

彼はもともと佐藤暖子に気づいていなかったが、信号待ちの間に目に入った。

一人の女性が道路に飛び出し、子供を救う姿を見たのだ。

その子供は明らかに双極性障害の兆候を示していた。

大声で怒鳴り、拳を振り回している。

傍らには男の子の両親が立ち、どうしていいか分からない様子だった。

しかし口から出るのは子供を責める言葉ばかり。

「どうしてこんな言うことを聞かない子に育ってしまったんだろう?」

男の子の母親に至っては大泣きしながら言った。「少しは私たちの気持ちを考えてくれないの!」

男の子は両親の責める声を聞き、さらに制御不能な状態になり、自分の頬を狂...

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