第9章

煙霧弾が廊下に投げ込まれたのだ。

誰が投げたのかは、監視カメラがないため調べようがない。

藤原宴は眉間を押さえた。元々隆太のことで気分が優れなかったのに、今度はこんなことまで起きた。

しかし、これはあの女が只者ではないことの証拠でもあった。

そう思うと、藤原宴の目が鋭くなった。

どうやら、彼女を見くびっていたようだ。

もしかしたら、彼女の背後には何か強力な存在がいるのかもしれない。

彼はすぐさま冷たい声で命じた。「追わせろ。必ず連れ戻せ!」

藤原宴が電話を切ると、中村玲文がまだ立ち去っていないことに気づいた。

彼は少し苛立ちながら眉をひそめた。

「宴、何かあったの?」

...

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