第100章

白井美咲は素直にこくりと頷き、背負っていたリュックを下ろして白井麗子に手渡した。

彼女はまず深く息を吸い込むと、小さな両手で自分の頬をぺちぺちと叩き、それから顔の筋肉をほぐすように様々な表情を作り始めた。

その様子を傍らで見ていた村上翔太は、少し驚いたように丸い目を見開き、物珍しそうに妹を見つめている。

顔の準備運動を終えると、白井美咲は愛らしく微笑んだ。

「お母さん、着替えてくるね」

白井麗子は頷き、車椅子を操作して彼女の後ろにつく。

「翔太、行くわよ」

今回のCM撮影はロケだ。初冬ということもあり、空気は少し肌寒い。幸い、監督が屋外での着替えを気遣ってくれたおかげで、白井美...

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