第75章

耳をつんざくような急ブレーキ音が響いた。慣性の法則には逆らえず、後部座席で身を縮めていた白井麗子は、無様にシートの下へと転げ落ちる。運悪く、前の座席の下にある鉄製の金具に額を強打してしまった。

「うっ……」

白井麗子は低く呻き、額を押さえる。指の隙間から、鮮血がツーと伝い落ちた。

村上信也は瞬時に白井麗子の様子を確認した。血に塗れた彼女の顔を見た途端、その表情は一気に陰り、車内の温度が氷点下まで下がったかのような錯覚を覚える。

藤本大和は命知らずにも喚き散らした。

「村上! 降りてきやがれ! そう簡単に連れて行けると思うなよ!」

村上信也は眉を挑発的に上げ、冷徹な眼差しを向けた。...

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