第82章

佐藤侑里を送り届けた後、村上信也は本邸へと戻った。

リビングに足を踏み入れると、そこには村上の祖母の姿しかなかった。いつもなら、彼女の周りを囲んでは「お母さんに会わせて」とせがんでくる二人の小悪魔が、今日に限って影も形もない。

彼が戻ってきたのを見て、祖母の手がわずかに止まり、その表情に微かな狼狽が走る。

「戻らないかと思っていたわ」

そう言いながら、彼女は無意識のうちに視線を二階へと向けた。

村上信也は両手をポケットに突っ込んだまま、目を細める。

「美咲と翔太は? あなたの話し相手をしていないのか」

祖母は言葉を濁すように答えた。

「もうこんな時間でしょう。あの子たちなら部...

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