第86章

藤本家当主は小さく溜息をつき、申し訳なさそうに言った。

「白井さん、本当にすまなかった。先ほどの件は我々の過ちだ。すでに大和に人をやって、佳奈子さんを送り届けさせたよ」

白井麗子は少し驚いた。もっと長く説得が必要だと思っていたのに、意外とあっさり納得してくれたようだ。

彼女は頷き、川島京子を見上げた。

「じゃあ、行きましょう」

川島京子が車椅子を押して歩き出すと、突然、藤本健司が呼び止めた。

「麗子!」

白井麗子は車椅子を回して彼と向き合い、その目を真っ直ぐに見つめて、一言一句はっきりと告げた。

「健司さん、お気持ちは分かっています。すぐに海外から飛んで来てくれたことには感謝...

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