第87章

白井美咲の消え入りそうな声を聞いただけで、村上信也は十分満足だった。慌てて彼女を解放すると、美咲は百メートル走のような猛スピードで村上翔太の元へと駆け寄り、甘えた声で呼びかけた。

「お母さん!」

その愛らしい「お母さん」という響きに、白井麗子の心は瞬時に花が咲いたように明るくなり、口元が耳まで届くほど緩んでしまった。

「美咲、お母さんに会いたかった?」

白井美咲は何度も頷き、小さな唇を尖らせて甘えた。

「お母さん、もう死んじゃうくらい会いたかったよ。いつ会いに来てくれるの? 私もお兄ちゃんも、お母さんが恋しくて……夜も眠れないし、ご飯だって喉を通らないんだから」

白井麗子の胸が締...

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