第97章

約束の時間まであと僅かというところで、白井麗子は顔いっぱいに張り付いたような笑みを浮かべた。

「村上さん、そろそろ子供たちとの面会時間ですわ。中に入れてくださいな。あの子たちの好きなケーキを焼いてきたんです。これ以上待つと冷めてしまいますから」

 そう言いながら、彼女は車椅子のハンドリムを回し、正門の方へとじりじりと距離を詰める。

 村上信也はそんな彼女を冷ややかな目で見下ろしただけで、何も言わずに本家の門を大股で跨いだ。

 白井麗子はふんと鼻を鳴らし、彼の背中を追う。

 彼女の乗る車椅子の車輪が門を通過した、その瞬間だった。

 村上信也が身を翻し、彼女の背後に回り込んだのだ。

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