第98章

深夜、紅葉御苑。

佐藤侑里は椅子に深く腰掛け、白魚のような指でワイングラスの脚を摘まみ、ゆっくりと揺らしていた。

瞳を細め、午後に村上信也と別れた時のことを思い返す。彼の顔色は恐ろしいほど陰鬱だった。きっと自分のために、あの女に報復してくれたに違いない。

そう思い込んで数時間待ったが、何の連絡も来ない。

待ちくたびれた彼女の胸中に、怒りとやるせなさが込み上げてくる。彼女はグラスを置くと、たまらず村上信也に電話をかけた。

コール音が二回鳴ったところで電話が繋がる。彼女の声色は、瞬時に甘く優しいものへと変わった。

「信也さん、こんな遅くにまだ起きていらっしゃるの?」

村上信也は淡々...

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