第4章 偽装聖女の潜入

深呼吸を一つ。私は冒険者ギルドの重厚な扉を押し開けた。

一瞬、ホールを埋め尽くしていた喧騒が嘘のように静まり返る。

酒場のジョッキがぶつかる音、依頼を巡る怒声、仲間を募る呼びかけ――そのすべてが止み、全員の視線が戸口に立つ私へと、まるで磁石に引かれるように注がれた。姉、エリスがこれまで現れるたびに浴びてきたのと同じ、あの灼けつくような視線だ。

「エリス様!……ご無事だったのですね!」

ギルドマスターがカウンターから駆け寄るようにして出迎える。その顔には安堵が満ちているが、瞳の奥には隠しきれない心配が滲んでいた。

「お身体はもうよろしいのですか?セラス様から、再起不能に近いほ...

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