第5章 大魔導師の絶望的な末路

深夜、月は黒雲に覆われ、屋敷全体が不気味な静寂に包まれていた。私はエリスの部屋の扉をそっと押し開ける。ちょうど外から帰ってきたばかり、という体で。

部屋には微かな蝋燭の火が一本。その揺れる光の中、リリスが暗がりの隅で何やらこそこそと忙しなく動いていた。私が熟睡していると思い込んでいるのか、その動きはひどく慎重だ。私は扉の背後の影にそっと身を潜め、この裏切り者の一挙手一投足を冷ややかに観察する。

彼女が懐から記録水晶を取り出し、壁に掛けてある魔法陣の図面へと向けるのが見えた。

あれらはすべて、姉さんが生前に【聖光浄化魔法】を研究していた時に残した貴重な手稿だ。一つ一つのルーン文字...

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