第154章 わがままな貴婦人

北村萌花は足早に喫茶店へと向かっていた。本来なら電話を受けてすぐ駆けつけるはずだったが、研究所で急遽書類を届ける用件が発生し、数分の遅れが生じてしまったのだ。

店に足を踏み入れた瞬間、怒鳴り声が耳に飛び込んできた。

「あんた、どこに目をつけてんのよ! 私の服がいくらするか分かってるの? クリーニング代だけで、あんたの半年分の給料が吹き飛ぶわよ!」

煌びやかなドレスを纏い、全身を宝石で飾った有閑マダムが、ウェイトレスの鼻先に指を突きつけて罵声を浴びせている。その傍らには、一人の若い女――青井亜由美が立っていた。

「お客様、私は普通にコーヒーをお持ちしただけです……急に立ち上がってぶつか...

ログインして続きを読む