第172章 宴会の異変

下村賢太が宴会場の扉に手をかけようとしたその時、扉が内側から不意に開かれ、彼は思わず足を止めた。

会場にいる多くの人間が下村賢太の顔を知っていた。何しろ彼は、あの佐藤健志の片腕とも言える社長秘書なのだから。

下村賢太は一瞬の出遅れを取り戻すように、顔に愛想の良い笑みを浮かべながら会場へと足を踏み入れた。

その腕には、佐藤健志から託された贈り物の箱が大切そうに抱えられている。

「皆様、ごきげんよう。本日は青井秋葉奥様の喜寿のお祝いと伺いまして、佐藤社長より記念の品をお届けに参りました」

下村賢太は朗らかに来意を告げたが、すぐに会場の空気がどこかおかしいことに気づいた。

これまでも佐...

ログインして続きを読む