第178章 花を育てる老人

車はゆっくりと、佐藤家の古き良き荘園へと滑り込んだ。

佐藤健志の祖父である佐藤茂典は静寂を好むため、この歴史ある屋敷に隠居している。佐藤家の人間は、週末ごとにこうして老人の機嫌を伺いにやってくるのが習わしだった。

健志は車を止めると、助手席の北村萌花に視線を向けた。

萌花は両手の指を固く絡ませており、その様子からは隠しきれない緊張が伝わってくる。健志は小さく笑うと、彼女の強張った手に優しく自分の手を重ねた。

「僕の祖父は人を食う悪竜なんかじゃないよ。そんなに緊張しなくていい、僕のお姫様」

萌花は呆れたように白目をむいて見せた。

「北村先生、と呼んでいただく方が好みですけれど」

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