第126章

その時間帯は使用人たちが昼休みに入っていて、警戒も緩んでいた。だから江口乃々は、驚くほどあっさり部屋を抜け出せた。

 今の彼女から、いつもの甘く愛らしい雰囲気は消えていた。表情は引き締まり、瞳はまっすぐ前を射抜く。まるで小さな兵士。

 乃々は「たたたっ」と階段を駆け下り、別荘の門へ向かった。辰兄さんを助けに、ひとりで行くつもりだった。

 ――と。

 背後から、焦った足音が一気に迫ってくる。乃々は大きな目を細め、振り向きざまに睨みつけた。

 またこいつ!

「今、暇じゃない。邪魔すんな!」

 辰兄さんが危ない。無駄にしてる時間なんてない。

 乃々はそれ以上言わず、前へ進む。だが青...

ログインして続きを読む