第127章

決定的な瞬間、青木俊明の手首を誰かがぎゅっとつかみ、落下を寸でのところで止めた。

 俊明はまだ心臓が暴れていた。顔を上げると、漆黒の瞳と目が合う。——その瞬間、さっきまでの恐怖がすっと引いていく。

 荒い息のまま、彼は無理やり笑ってみせた。

「ありがとう、弟くん!」

 その呼び方に、辰の表情がわずかに冷える。だが、まだ安全に着地していない。今は突っ込む場面じゃないと飲み込んだ。

 ふたりが無事に地面へ降り立って、江口乃々はようやく息を吐いた。胸元を押さえ、震える声で言う。

「ふぅ——よかったぁ……ほんと、死ぬかと思った……」

 俊明も硬い地面を踏んだことで、張りつめていた神経が...

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