第7章

朝の光が、高層ビルのガラスカーテンウォールを抜けて東京の街並みに降り注ぐ。AI広告ボードは、機械的な漫画の予告を無音で流し続けていた。

未来の佐藤一郎も目を覚ますと、自分が簡素な賃貸アパートの一室に寝ていることに気づいた。

彼は2080年に戻っていた。

部屋の隅には黄ばんだ漫画の原稿用紙が山積みになっており、机の上には旧式のペンタブレットと、色褪せた一枚の家族写真が置かれている。

写真の中では、優しい女性が幼い子供を抱き、その隣には意気揚々とした様子の若い男性が立っていた。

未来の一郎は写真立てを手に取り、女性の面影を指でそっと撫でた。

「母さん……」彼の声は詰まっ...

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