第9章

晴也は十歳の誕生日に見た光景を、永遠に忘れることはなかった。

その日、彼はこっそりと母の後をつけ、秋葉原にある一軒のマンガ喫茶まで来ていた。

窓越しに、母が編集者らしき人物に自分の作品を見せているのが見えた。

「夏美先生、あなたの絵は確かに個性的ですね……」編集者は丁寧な口調で言った。

「ありがとうございます!作品で一番大切なのは、描き手の感情を込めることだと思うんです……」夏美は期待に胸を膨らませて言った。

その時だった。佐藤一郎と田中優が突然現れたのは。

田中優は夏美の原稿をちらりと見ると、冷笑した。「こんな時代遅れの絵でまだ発表したいなんて。笑わせるわ」

「優君...

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