第8章

明月山の山道はうねうねと曲がりくねり、空気は清々しく、やや肌寒い。

藤原翔太郎が私の隣を歩いている。二人の間には、遠くも近くもない、絶妙な距離があった。

沈黙が影のように付きまとう。しかし、以前とは違い、その沈黙はもはや私を不安にはさせなかった。

むしろ彼の方が、時折探るような視線を寄越し、その目には私には読み取れない複雑な感情を宿していた。

「この山の神社はご利益があるそうですよ」

藤原翔太郎が沈黙を破った。その声にはどこか不自然さが滲む。

「多くの財界人が商売繁盛を祈願しに来るそうです」

私は可とも不可とも言わずに頷き、ただ上を目指して登り続けた。

山間の風...

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