第100章

この日の最後の撮影は、別れのシーンだった。新藤鈴奈が驚くほど順調に演じ切った。

「カット!」の声がかかった途端、葵がコーヒーを両手で差し出してくる。

「鈴奈さん、今日のシーン、めちゃくちゃ良かったです! 感情が……ほんと、リアルで!」

新藤鈴奈は困ったように笑った。

演技じゃない。ほんとに別れたばかりだ。

受け取ったコーヒーをひと口。苦味が舌に刺さって、眉間がきゅっと寄る。胸の奥が、じわりと痛んだ。

別れたあとって、どうしてか甘いものが欲しくなる。

「……ケーキ、ある?」

葵はこくこくとうなずく。

「シェリーさんが買って、休憩室に置いてあります! 取ってきますね」

葵が駆...

ログインして続きを読む