第101章

「……悪いけど」

新藤鈴奈は表情ひとつ変えずに手を引き抜いた。澄んだ瞳には氷のような冷たさが宿り、目の前の男をまっすぐ射抜く。

「私、引き返すつもりはないの」

たとえ神園和臣が自分を欺いていたとしても、だからといって稲垣征也を許す理由にはならない。

稲垣征也の表情が、わずかに強張る。瞳の奥に冷たいものが滲んだ。

鈴奈は怯まない。真正面から、その視線を受け止める。

「俺を選ばないなら、誰を選ぶ?」

稲垣征也が低い声で問い返す。

「贅沢に慣れた生活だ。俺を離れて、誰がそれを与えられる? 神園和臣か?」

鼻で笑うと、彼はいきなり鈴奈の腕を乱暴につかんだ。

「戻らないって言うなら...

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