第110章

「もう、あなたと話すことなんてない。二度と付きまとわないで」

新藤鈴奈はそう吐き捨てると、背を向けて車に乗り込もうとした。

「待て、最後まで聞いてくれ」

稲垣征也が慌てて手を伸ばし、彼女の腕を掴もうとする。

その前に、すっと三浦江成が割って入った。稲垣征也の手を遮るように掌を差し出し、穏やかな笑みを崩さない。

「稲垣社長も聞こえましたよね。鈴奈は『話すことはない』と言っています。ここ、マンションの入口ですし……揉めているところを見られるのは、あまり良くないかと」

稲垣征也の視線が冷たく沈む。まるで騎士のように鈴奈の傍らを守る男を見据え、顔色ひとつ変えないまま、三浦江成越しに鈴奈へ...

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