第112章

アシスタントは困ったように眉を寄せた。

「真由さんが水に入りたくないわけじゃないんです。体がもたないだけで……どうか、少しだけ融通していただけませんか」

槙野監督の顔が沈み、声色まで冷たくなる。

「午前中の打ち合わせでは問題ないって言ってたよな。なのに急に『入れません』って、そんな短時間でどこから代役を連れてこいって言うんだ」

監督が本気で怒ったのを察し、アシスタントはへらりと笑うことすらできず、黙って頭を下げた。くるりと踵を返し、足早に控室へ戻っていく。

ほどなくして、槙野監督のスマホが鳴った。

通話を取った監督は、相手の言葉を聞くほどに顔色を悪くしていく。短く相槌を打っただけ...

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