第114章

中橋社長が突然、酒をあおらせようとしてきた。もし新藤鈴奈が外で、あの連中の吐き気のする算段を耳にしていなければ――この一杯、きっと本当に飲んでいた。

けれど今は、相手の腹の内を知っている。飲むわけがない。

商談がまとまらなかったとはいえ、今ここで完全に決裂させれば、今後顔を合わせるたびに気まずくなる。だからといって、黙って耐え続ける理由にはならない。

鈴奈は静かに座ったまま、唇の端だけを薄く上げた。

「すみません。本当に飲めないんです。今夜、薬を飲んでて……」

鈴奈が断った瞬間、中橋社長の機嫌は露骨に落ちた。どん、とグラスを卓に叩きつける。

「来る前に、新藤さんが飲めないなんて聞...

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