第13章

夫として見れば、稲垣征也はおそらく最後まで、自分の妻が芸能事務所と契約したことを知らなかった。

なるほど、あれほど離婚にこだわったわけだ。

もう自分で逃げ道を確保していたということか。

――甘い。

芸能界が、そう簡単にやっていける場所だとでも思っているのか。

稲垣征也はスマホを乱暴に机へ置くと、険しい顔のまま命じた。

「少し調べろ。あいつの――」

そこまで言って、ふいに口をつぐむ。

……いや、いい。

少しくらい痛い目を見なければ、あいつは自分がどれだけ恵まれた暮らしをしていたのか、わからないだろう。

「稲垣社長、何をお調べすればよろしいでしょうか」

秘書が戸惑ったように...

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