第143章

「稲垣社長から差し入れのアイスが届いてまーす! 列に並んで、順番に受け取ってくださーい!」

場務の声が、撮影現場いっぱいに響き渡った。

新藤鈴奈がカットを終えて戻ってくるなり、葵がタオルを掲げて駆け寄り、そのまま手にしていた冷たいカップを差し出す。

鈴奈がちらりと目をやると、葵は慌てて言い添えた。

「津田真由さんが、アシスタントさんに頼んで持ってこさせたんです」

「ああ……なるほどね」

鈴奈はすぐに察して、薄く笑った。

葵は鈴奈の耳元へ身を寄せ、声を落とす。

「でも、これ自体は稲垣社長の差し入れですし……たぶん、見せつけに来たんだと思います」

鈴奈が休憩用の椅子に腰を下ろし...

ログインして続きを読む