第145章

ドアの向こうからは、返事ひとつない。室内からは黒い煙がごうごうと噴き出し、廊下へと押し寄せていた。

これだけの騒ぎなのに、誰ひとり駆けつけてこない。

新藤鈴奈は胸の奥に薄い違和感を覚えたが、今は考えている場合じゃない。

彼女は振り返り、散らかった雑多な荷物をかき分ける。衣装ハンガーの支柱はたしか中が詰まった金属製だったはずだ。あれで叩けば、扉だってこじ開けられる。

だが、ハンガーに掛かった服はすでに燃え上がり、金具は赤く熱を帯びている。

新藤鈴奈が指先で触れた瞬間、じゅっと焼けるような痛みが走り、反射的に手を引っ込めた。

それでも止まれない。歯を食いしばり、火傷した手でネジを力任...

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