第149章

「ママ……」

おずおずとした声がした。淡いピンクのワンピースを着た稲垣日織が、病室の入口にそっと立っている。ためらいがちに、新藤鈴奈を見つめていた。

新藤鈴奈は眉をひそめ、反射的に日織の背後へ視線をやる。――ひとり。

「どうしてここにいるの」

低く落ちた声に、歓迎されていない気配が滲む。日織はそれを敏感に感じ取ったのか、目尻がじわりと赤くなり、俯いたまま小さく呟いた。

「パパが……ママ、ケガしたって……。心配で……」

言い方がきつかった、と鈴奈は気づく。息を整え、手招きした。

「……こっちおいで」

日織は言われたとおり近づき、包帯の巻かれた鈴奈の両手を見上げる。小さな眉がきゅ...

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