第32章

「もしもし。稲垣征也さん、新藤鈴奈さんのご主人でいらっしゃいますか?」

その電話を受けたとき、稲垣征也は病院で稲垣日織に付き添っていた。

最初は、ただの詐欺電話だと思った。だが相手が警察手帳の番号を名乗り、本人確認の情報まで口にしたことで、ようやく本物の警察だと確信する。

警察がわざわざここへ電話をかけてくる――その事実だけで、胸の奥を嫌な予感がいくつも駆け抜けた。

拳をきつく握りしめ、感情が漏れるのをどうにか抑える。掠れた声は、わずかに震えていた。

「新藤鈴奈に、何かあったんですか?」

「新藤さんと連絡が取れず、警察のシステムからご主人の連絡先を確認しました。新藤さんが届け出を...

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