第52章

馴染みのある男物の香水がふっと鼻先をかすめ、新藤鈴奈はようやく少し意識を引き戻した。顔を上げると、真っすぐこちらを見下ろす一対の瞳とぶつかる。

男は唇の端に薄い笑みを乗せていた。だが、その目にはまるで温度がない。鈴奈へ向けられるときだけ、わずかに色が和らぐ。

「大丈夫か?」

新藤鈴奈は首を横に振った。神園和臣は彼女の身体を支えるように手を添え、すぐさま手を出したボディガードたちへ鋭い視線を流す。

「死にたいのか?」

淡々とした口調なのに、ぞっとするほど冷たい。

体格だけなら相手のほうが上だった。だが、神園和臣はそれをものともしない。圧を帯びた長身と、研ぎ澄まされた気配だけで、二人...

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