第65章

新藤鈴奈はぐっすり眠り込んだ。騒がしい病院を離れたせいか、身体の奥まで息を吹き返したみたいだった。

昼食を済ませると、彼女は神園和臣と一緒に撮影基地へ向かった。

車を降りた途端、誰かが正気を失ったみたいに駆け寄ってきて、いきなり彼女の手をつかむ。

「鈴奈! 大丈夫か!?」

新藤鈴奈はわずかに目を見開き、目の前の男を見上げた。心配そうに眉を寄せた顔。けれど、記憶の引き出しには引っかからない。

少し迷ってから、申し訳なさそうに言う。

「すみません。私、記憶がなくて……あなた、どなたですか?」

男はその場で殴られたみたいな顔になり、ふらりと数歩下がった。

「……俺を、覚えてないのか...

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