第70章

津田真由がドアを開けて入ってくると、デスクの向こうに座る男を見て、口元にふっと笑みを浮かべた。ゆっくりと歩み寄りながら、甘えるように声をかける。

「征也、呼び出して……何か用?」

ここ数日、稲垣征也には会えていなかった。会社に来ても、いつも何だかんだ理由をつけられて追い返されるばかり。なのに今日は、征也のほうから電話を寄こしてきたのだ。

胸の奥で小さく弾む期待。けれど顔を上げた瞬間、その期待は氷水を浴びせられたみたいに冷えた。

男の瞳は冷たく、整った顔立ちには怒気が滲んでいる。次の瞬間、スマホが――ぱん、と――彼女の目の前へ投げ出された。

「ネットに書いたこれ、どういうつもりだ」

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