第82章

津田真由は、ふいに手元を「びくっ」とさせた。次の瞬間、たっぷり入ったコーヒーがそのまま新藤鈴奈のスカートへ――ばしゃり、と。

メイク台の前は狭い。しかも津田真由がわざと進路を塞いでいたせいで、新藤鈴奈は避けることすらできず、コーヒーをまともに浴びる羽目になった。

下手すぎる芝居だった。目の奥に浮かぶ得意げな色も、隠す気がない。誰が見たって、故意だとわかる。

新藤鈴奈のこめかみに、青筋がぴくりと跳ねた。

「きゃっ、ごめんごめん鈴奈。わざとじゃないの。拭くね」

津田真由は鈴奈の表情などまるで見ていない。慌てたふりでティッシュを引き抜き、鈴奈の服に付いたコーヒーを――拭くというより、塗り...

ログインして続きを読む