第85章

稲垣征也は、新藤鈴奈の反応がここまで激しいとは思っていなかったのだろう。しかも、神園和臣を庇うために、だ。

顔色はみるみる最悪になったが、自分に分がないことも理解している。しばらく黙り込んだあと、理性を取り戻すように一歩引いた。

「……悪かった。俺が悪い」

掠れた低い声。

「日織が本当に良くないんだ。それで、君に会いに来た。あの子は……君の娘でもあるだろ。頼むから、一度顔を見に行ってやってくれ」

新藤鈴奈は唇をきゅっと結ぶ。

「行くわ。だから、今は帰って。ここはあなたを歓迎しない」

稲垣征也は、失意を隠しきれない顔のまま去っていった。

新藤鈴奈はそこでようやく、まだ撮影現場だ...

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